2020 年 1 月 13 日 のアーカイブ

令和元年度大田笑市はたちの集い ~拝啓 15の君へ~

2020 年 1 月 13 日 月曜日 投稿者:しず大棚けん

令和元年が終わってしまいましたね。少し寂しい菊池です。僕は1月3日に行われたはたちの集い(成人式)に参加してきました。……わかります、なぜ女性に書かせないのか? そうお思いでしょう。女性の晴れ姿が見たいのに! 僕もそう思います。でもこれだけは言わせて下さい。僕は頼まれてしまったから書くのであって、自ら書きたいと言った訳ではないのです。


「袋は付けますか?」
その言葉を聞き、私は帰ってきたのだと実感した。

新幹線を降り改札を出ると、いつもの閑散とした駅からは想像ができないほどに人で混み合っていた。ロータリーには旅館のバスが多く停まっており、利用者の多くは観光客だとわかった。彼らはきっと那須か塩原のどちらかに行き、スキーや温泉を楽しむのだろう。
そんな観光客とは対照的に、私は父親の車で実家のある大田原に向かった。町を出て2年弱が経ったが、私のいない間に、市役所は新しくなり、新しい道が完成し、スターバックスができていた。そこは私の知っている大田原ではなく、なんとなく不安を覚えた。

その夜、新しくできたクスリのアオキに行ってみた。駐車場は無駄に広かったが、店内はガラガラの客入りだった。私は稼働している唯一のレジに向かい、会計を済ませた。
「袋は付けますか?」
店員の女性はそう言った。若くて可愛い顔をしているのに、何ということだ。その言葉は完全になまっていた。これだよ、この抑揚のない話し方こそ大田原市民だ。
「ああ、ここで働きたい」そう感じさせる田舎のドラックストアだった。

次の日、私は「はたちの集い」に参加した。成人年齢の引き下げに伴い、「成人式」から名称を変更したそうだ。内容としては、市民憲章を読み、お偉い方の話を聞き、パイプオルガンの演奏を聴くというものだった。式中は特に何も起きずに、面白くはなかった。
午後は小学校でタイムカプセルの取り出しを行った。しかし、タイムカプセルの入った箱を開ける鍵が無く、結局中身は見られなかった。幹事の段取りが悪かったのだろうが、誰もそれを批判しなかった。

夜、結婚式場にて中学校の同窓会が開かれた。最近結婚式を挙げる人が少ないので、式場も宴会場として使われているようだ。食事はビュッフェ形式で、テーブルには椅子が無く、自由に動けるようになっていた。飲み物はバーのような場所があり、バーテンダー的な人が酒を作ってくれた。
食事はほどほどに、私はバーのカウンターで酒を飲みながら旧友と話し込んでいた。5年ぶりに会ったというのに、すぐにあの頃のように戻れた。9年間一緒に過ごした時間は、決して忘れられるものではなかった。馬鹿なことを言い合い、馬鹿なことばかりをしていたあの時代が、とても懐かしく思えた。
男はほとんど変わっていなかった。女性はほとんど誰だかわからなかった。しかし、学生・ニート・浪人生・社会人、皆立場は違っても、根底にあるものは同じだった。同じコミュニティに属し、そこから離れられないのだ。
—―いくら街並みは変わっても、そこで生きる人々は、何も変わっていなかった。

同窓会はあっという間に終わってしまった。……もう彼らとは一生会えないかもしれない。なんとなく、その場を離れたくなかった。
「一緒に帰っか?」
自分の車で来ていた友人にそう言われた。中学の時には、彼が仕事をして車を持っている姿など想像できただろうか? スーツ姿の彼の運転する車に乗る日が来るなんて……。
「帰るべ!」
この時の私はきっと笑顔だったのだろう。彼の言葉は最高に嬉しかった。
「家に着かなければいいのに」と心から思った。もっとあの頃の感覚を味わっていたかった。
—―いつかこの町に帰って来たい。しみじみと思う。だが、この町には私の望むような仕事はない。果たしていつ戻って来られるのだろうか? ああ、こんな想いをするのならば、帰って来なければ良かった……。

拝啓 15の君へ
手紙ありがとう。君の頑張りのおかげで今の私がいます。君の描いていた人生とは少し違うけれど、それなりに充実した日々を送っているよ。今は勉強ばかりで辛いだろうけど、仲間との日々を大切に過ごしてね。
「たとえ叶わない夢だとしても追い続けろ! きっと良いことがある」
良いこと書くね。名言だよ。
これからもっと幸せになれるよう頑張ります。君も頑張ってね。
20の君より

—―旅たちの朝、ひらひらとふっかけた雪は、地面に辿り着くことはなく、空に消えていった。

 

地元が恋しくなった 菊池


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