静岡の茶草場農法棚田いこうよ.net | 棚田と茶草場農法で守られる生態系

せんがまち周辺の茶草場風景

秋~冬になると、せんがまち周辺では、ススキやヨシを刈ったものを束ねて立てる風景が見られます。こうして自然乾燥させた草を細かく切断し茶園の畝間(うねま)に敷くと、フカフカの土壌になります。

この、ススキやヨシを茂らせている半自然の草地を「茶草場」といいます。掛川、菊川、島田、牧之原各市と川根本町のお茶づくりでは伝統的な農法ですが、他県ではほとんど見られない中で、せんがまちは茶草場と棚田が隣接する珍しい地域です。

平成25年にはこのお茶づくりの方法が、世界農業遺産「静岡の茶草場農法」として認定を受けました。「世界農業遺産」は、農業によって守られている自然や文化を遺していくための制度です。

茶草場の作業(11月~12月)

草刈・乾燥・敷草

なぜ茶草を敷くの?

昔、せんがまち周辺の先祖達は山の傾斜地に田を切り開き、馬を育てて生活をしており、牧草地の広がるこの地域は、江戸時代には「駒場(こまば)の里」と呼ばれていました。

明治初期、職を解かれた武士からなる開拓団の入植と共にお茶の生産が盛んになると、人々は馬を飼うのをやめ、牧草地に生えるススキをお茶の肥料として使うようになりました。
(地元では今も「茶草場」でなく「馬草(まぐさ)場」と呼ぶ人も多いです。)

このように、馬草はお茶の肥料「茶草」として定着した訳ですが農法としても優れた効果があります。

◎茶畑の雑草を抑えたり、霜や寒さから守る(特に幼木時に有効)
◎有機肥料として肥沃な良い土ができる

茶草を入れ大切に作られたお茶は、製茶のときに香りが違い、地元では「山側(やまが)の香りがする」と言います。

茶草場と棚田の生き物

茶草場と棚田には、多種多様な動植物が住んでいます。人が適度に手を入れる事で維持され、山・川・田畑・草地などが隣接した環境。ここでは例えば原生林において競争力の弱い生き物にも、チャンスが回ってくるのです。

せんがまち周辺では近代化した農業の中で、美味しくて良いお茶を作りたい というお茶農家のこだわりがあったからこそ、手間のかかる茶草場農法を継承し、その茶草場が豊かな生態系を育み「生物多様性」が守られてきました。人間が関わることで、守られる生き物がいる。人間も生態系の一部として暮らしていく文化と知識を伝えるため、NPO法人せんがまち棚田倶楽部では、生き物教室や出張授業にも取組んでいます。

このような里山の生態系とその歴史は、40億年の歴史を持つ地球の中で、ほんの小さな範囲・短いものかもしれませんが、この小さな生態系が、3,000万種ともいわれる地球全ての生き物と複雑に繋がり合っています。

フジタイゲキ(6月)

ユウスゲの群生(7月)

棚田と茶草場周辺で見られる「秋の七草」

葛(クズ)の花

ススキ

桔梗(キキョウ)

女郎花(オミナエシ)

藤袴(フジバカマ)

萩(ハギ)

撫子(ナデシコ)

皆さんも、生き物のことや、普段食すもの・使うものが、どこでどのように作られたのか、関心を持ってみませんか?その中で、茶草場農法で育てられたお茶を選んで頂ければ、お茶農家が茶草場と棚田を守り、ここで生きる動植物を守っていくとても大きな力となります!

棚田の歴史と茶草場が織りなす美しい景観と自然環境を次世代へ

厳しい地形条件のもと、先人達の弛まぬ努力による開墾と、長い年月をかけた営みによって継承されてきた、せんがまちの棚田と茶草場の、豊かな実りと素晴しい風景。
しかし、世界農業遺産「静岡の茶草場農法」の認定を受けた棚田周辺の採草地(茶草場)の一部はの茶農家の高齢化により放棄され、里山の荒廃が進んでします。
この貴重な日本の原風景を守り、先人の苦労を肌で感じ、この貴重な里山の景観と文化を子供達に残す事が私たちの使命と考えます。

棚田オーナーや、県内外の学生をはじめ共感を持って参加してくれる若い人たちが増えつつある中、今後棚田の保全と茶草場の有効活用について、研究者や企業の力も取り入れさらに幅広い人たちの輪を広げていく事を目指しています。

静岡の茶草場農法が世界農業遺産に認定されましたのは、静岡大学農学部 稲垣 栄洋(いながき ひでひろ)先生の尽力によるものです。静岡の茶草場農法と、棚田の生物多様性の発掘人である先生に感謝いたします。

せんがまちで茶草場農法を行う茶農家

茶草場農法の生物多様性保全貢献度マーク

お茶の袋に表示されている一芯二葉がデザインされたマークは、茶草場農法を継続する農家を評価した認定マークです。生物多様性保全貢献度が茶葉の数で表示されています。

  • 三つ葉
    【山中園】…代表者:山本 哲 TEL 0537-36-0527
    (せんがまちの理事長)

    【倉沢園】…代表者:堀 延弘 TEL 0537-36-1951
  • 二つ葉
    【上倉沢茶農協】…組合長:堀 幹夫

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